不器用な君と不機嫌な私



「な…かも…と…っ」


きっと彼女は今、


頭の中がいろんなことで

混乱しているんだろう


あんなに無邪気な笑顔を見せていた郁が


見知らぬ誰かに見えてしまったり。


きっと、郁の気持ちにも気付いたはずだ


それに、終いには


広瀬まで現れて。



少しでいいから、その悲しみを分けて欲しいと、


思うのに


俺にはただただ強く抱きしめるしかできないんだ、



「…もうわっかんないよ……っ

なにがどうなってるの…?


郁は…どうしちゃったの…っ?

仲本の、ことが…好きなの…?


だったら、先生は…っ、先生にとって、郁ってなに…?





すると藤原さんは声を殺すようにして、


必死で涙を止めようとしているのがわかった。


「いいから、我慢とか、しなくて。

大丈夫、大丈夫だから」





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