不器用な君と不機嫌な私

でも、それなら

郁にどうして言わなかったんだろう。


きっと、郁があんなに仲本に固執するまで


時間はたくさんあったはずだから。


「今からじゃ遅いの?

本当は俺じゃないって、言えないの?」


「それが、俺の約束。」


「え…?」


「広瀬は知ってるんだよ、郁が俺のことどう思ってたのか。

だから異常に期待してる郁に

実は俺じゃないなんて言ったら、

家族を失った郁にとっては、耐えられないって思ったんだろうね。

だから広瀬と約束した。

郁に絶対そのことは話さないって。」



そう聞いて


私はこの三人の中に
入れることはないんだと


察した。


この三人の輪の中に


足を踏み入れちゃいけないんだ。

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