不器用な君と不機嫌な私
「でも、俺だってそんな素直に
わかったなんて思えなかった。
だから、俺は言わないかわりに
あいつに気付いてもらわないといけない。
でもまさか俺だって、郁があんなになるとは思ってなかった。
俺がいけないんだよ、こうなったのも、全部
例え嘘でも、郁に約束を守るふりをすればよかったんだろうけどさ、
できなかった、どうしても
できなかったんだよ」
そして、仲本は悲しそうに笑った。
仲本も、辛かったんだ
この人は、郁があんなふうに
なってしまったのを
全部自分のせいだと思ってるんだ
一人で抱え込んで
きっと嘘でも郁に約束を守るふりができなかったのは
先生が大切でもあったからなんだ
「藤原さん、広瀬を好きなのは
俺は何も言わない、
本当に知りたいなら
全部教える、でも
俺に約束してほしい
今日で、広瀬のことで泣くのは最後にしてほしいんだ
約束、できる?」
今から、
話すことが
私を傷つけると
遠回しに言ってくれてるんだ
いまさら、仲本の優しさに
気づくなんて、バカだ。
きっと学校で話せないと言ったのは
私が泣くと思ったからなんだ
私はただ、黙って頷くしかできなかった。