不器用な君と不機嫌な私

重ねる唇の味


文化祭当日。

また郁はいつもどおりやってくる。


学校に来れるようになったのは


きっと広瀬となにかあったからだと、信じたい


郁は俺と話していても


目を合わせようとはしなくて


それならそれで、いい



郁が元に戻ってくれるのなら

それでいいんだ。


ただ、問題の俺の気持ちだった。



やっぱり、一度好きになってしまえば

すぐに、心の中から

消すことなんてできなくて



きっとそれは、藤原さんも同じなんだと思う。



昨日の今日だから、暗い顔して学校に来るかと思えば


思い切り下手くそな作り笑いでやってきた


「おはよ、」


「無理する意味がわかんないんだけど。」


「無理してなきゃ、やってらんないから」




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