不器用な君と不機嫌な私


「用具室?

それどこにあるの?」


忙しそうにしながらも、行ってくれるようだった。


「予備室の三号らしいけど、

忙しいなら別に大丈夫だから」




「あーうん、行けるよ、大丈夫」


そう言ったあと


黒い絵の具がたくさんついた指を見せてきて


すごいでしょ


と笑った。


こんなふうに無邪気に笑うこともあるんだと、今になって知るなんて


少し、遅すぎた。



「はいはい、すごいね、行くよ」



「ちょっと!なにそれ!」


こんなふうに怒鳴れるくらいなんだから、

少し元気になったのかな、なんて安心してしまった。


なにひとつ解決はしていないけど



文化祭くらい、楽しみたいんだよな、みんな。





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