不器用な君と不機嫌な私
「あ、泣くの禁止だから」
そう言うと仲本は、教室の床に座りこんだ。
「うっさい、わかってる。ってかなんで床に…」
「藤原さんはこれ番号順にまとめてよ。
おれ留めるから」
「なにそれ、楽なの選んだでしょ」
「え?なにが?」
「もういいです」
私もあきらめて、仲本から少しだけ離れた場所に座る。
そのあと、
改まって話そうとなると、どうしても言葉が出てこなかった。
でも、なぜかこの沈黙が気まずいわけではなくて。
夏休みの前のあの日を思い出していた。
体育祭とか、懐かしいなあ
そんなこと思ったりして。
「で?もしかして藤原さんってマゾなわけ?」
「はあ!?」
「いや、だってそうじゃん
広瀬のこと、やめるなんてさ
辛いんだろうなーって」
「あのねぇ、マゾだとかそういうのは仲本にだけは言われたくない」
「俺は違うから」
「うそ
たしかに先生のことは辛いけど、仲本だってそう」
「俺はね、マゾとかそういうんじゃなくて。
優しいんだよ、わかる?」