不器用な君と不機嫌な私


「え、ちょっ」


はっきりとそう言うと、仲本は戸惑ったのか

ホッチキスを床に落とす


「なに?どうかした?」


「それ言う?もういいじゃん、やめよやめよ、プリントまだ残ってるし、仕事しよ仕事」


このひと

明らかに、戸惑ってる。


なんだかそんな姿を見ると
微笑ましくて笑ってしまう。


「手にぎってくれたし。」


「ほんとに、やめて、恥ずかしいから」


「冷たいくせに、よくわかんないとこで優しいこと言ってくれるし」


「………」


「それに、私のこと見てくれてる」


そこまで言うと、仲本は片手で額を押さえてため息を吐いた。


「はいそうですね、で、なにがしたいの」


「でも」


「え?」


「その、えっと」


「なに?」


「あのことは、やっぱり」


「なにそれ、キスのこと?」



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