不器用な君と不機嫌な私
『郁?』
電話の向こうに聞こえるのは
郁の、王子様だった人の声。
「ごめんね、
話したいことがあるの」
『…わかった
でも今日学校休んでたよな。
大丈夫なわけ?』
棘のある口調でも、平気。
郁は知ってる、
あなたは本当は
すごく心の暖かいひと。
「大丈夫、明日からは
ちゃんと行く。
ちゃんと行くから、話、聞いて」
『…そう、ならいいけど。
ちゃんと聞いてる』
もう、
誤魔化しはやめよう
嘘つきは、嫌いだよ
目をそらさないで
ちゃんと、見つめるの。
「あのね、
郁に約束してくれたのは
キョンじゃない、でしょう?」