不器用な君と不機嫌な私
言葉が出てこなかった


よくもまあこんなことが言えるものだ


信じられない



「あ…あんたねえ…」



「あんたじゃない、仲本京介。」


「わかった、仲本くん、わかったから、鞄を返してもらえないかな」


一度とびっきりの愛想笑いを食らわして、

仲本が抱えている鞄に手を伸ばすと

取らせまいと上に掲げられてしまった。

「いや、まだ話終わってないんだ、藤原さん」


そう言って仲本も気持ち悪いくらいにこやかに笑う。

いや、気持ち悪くはないんだよね


悔しいけど、かっこいいとか思っちゃったし


「なに?」


「俺もあんたと同じくらい
愛想笑い得意なんだよねー。」


「それだけ?

だったら早く返して」



もう一度手を伸ばすと

「あんたなんにもわかってないんだよ」

と、低い声が聞こえた。

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