不器用な君と不機嫌な私


『………傷つけて、ごめん』



「……違うよ


それは、郁が言うことだよ?」


でもね、キョン


これだけはわかってほしいな



約束をしてくれたのは


キョンだと譲らなかったのは



あなたが大好きだったから



これ以上にないくらい


大好きだったからなんだよ



あなただけを見てた



追いかけてた。



「ねえキョン」


『…ん』


「小学校の学芸会、覚えてる?」


『え?学芸会って、ああ

覚えてるよ


白雪姫、だっけ』


「うん。


郁が白雪姫で


キョンが王子様

だったよね。





『……』



郁の中で


その思い出だけが



きらきら輝いてる



あの一瞬だけ


神様が郁に微笑んでくれた



キョンを気持ちを、向けてくれた


最初で最後の


キョンのお姫様になれた一瞬。



それだけでよかったのかな



その思い出があるだけで



もう、いいよ


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