不器用な君と不機嫌な私
その日も郁は終礼が終わると同時に教室から出て行こうとした。
でも昨日と違うのは、
「かおりんばいばーいっ!!」
と大きく手をふってくれたこと。
かおりんと呼ばれるのはまだ慣れそうにないけど、
ほんの少し嬉しかった。
「…ばいばい」
秋穂とは違って、
郁は満面の笑みをしてくれる
自然な笑顔が私には新鮮だった。
「京介~、帰ろぜー」
京介と聞こえて、思わず声のするほうを見た
「ん~」
そうやって軽そうに返事をしたあと、目が合った。
こうして見ると、
仲本って背が高い。
それに、やっぱりカッコいいんだ。
昨日少しだけ思ってたんだけど。
「どうかした?」
「えっ、いや別に、」
話しかけられるとは思ってなかったから、少し戸惑ってしまった。
すると、またにやりと笑って
ひらひらと手を振り、
「あっそ。じゃあね。」
そう言って背をむけて教室から出ていったのだった。
どこか掴みどころの無いやつだと思う。
ふわふわしていて、雲のようだ