不器用な君と不機嫌な私

私以外誰もいない教室は


歩くたびに、乾いたタイルの軋む音がする。


去年はこんなこと、思いもしなかったのに


自分の席に座ってみて


窓に目を向けると

サッカー部が練習しているのが見えた。

必至でボールを追いかける姿は、なぜだか羨ましく思えた


私もあんなふうに、何かに必至になったこと

あったかな



一つため息をついて、今度は教卓に目を向けると
本のような、教科書のような
なにかが置いてあった


気になって、手にとってみると
それは出席簿だった。


「いいのかな…」


小さく呟くと、廊下から走ってくる音が聞こえてくる。


その足音はこの教室の前で止まって。


息を切らして、教室に入ってきたのは

広瀬先生だった。






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