不器用な君と不機嫌な私
そのときはまだ、彼女が
藤原香織という名前だということも
同じ学校だということも
何も知らなくて
俺は探そうともしなかった
だいたい女子が浴衣を着れば
可愛く見えるものだろ、なんて自分に言い聞かせて。
そして今年、その見覚えのある顔が平然として目の前に現れた。
早速郁に絡まれて
次の日は信じられない格好をしてきて
正直目が離せなかったんだ
だから彼女がいきなりクラスの女子と揉めているところを見て、少し嬉しくなった。
あの時と同じ、不機嫌そうな、凛とした表情をしていたから。