不器用な君と不機嫌な私
そのとき俺は、初めて
藤原さんの笑顔を見た。
静かに、しとやかに。
あの夏の浴衣姿を思い出す
短く乾いた笑い声がなんともくすぐったい。
なんなんだよ、これ
「…っていうかさ」
おかしな感情を紛らわすように、話を切り出した
「なに?」
「柳瀬がやるって言ったとき、嫌そうな顔してたのどこの誰だっけ」
「な、なにそれ」
「そう考えると、そんな藤原さんが可哀想でわざわざ学級委員になってあげたとしたら
俺って恩人じゃない?」
「な…な…んなのほんとに!
もー、わっけわかんない!
じゃあ恩を売るために学級委員になったって言いたいわけ?」
「んー、どうだろ」
「いいよわかった、感謝すればいいんでしょ?はいはい、わかりましたー。
あ、でもあんたが学級委員やるって言ったとき、私嫌な顔してたかもよ?」
にやりと小さく笑う顔も、やっぱりどこかしとやかだった。
もちろん、言っていることは
全くもって謙虚さのかけらもないんだけど
「それ、俺の前で言う?」