不器用な君と不機嫌な私
「ごめ、待った?」
「いえ、全然」
「じゃ帰るか!」
二カッと笑う先生を見て
心臓がどきりと跳ねた。
手に持ったままのコーヒー牛乳は
どうしてか離したくなくて
栓も開けずにただ握りしめていた。
「あのな、俺
前から藤原と話してみてーって思ってたんだよ」
「え?」
「いや、ほら。
郁と仲良いだろ?
あいつ、今まで女子の友達できたことってほとんどないからさ。
どんなやつなのか気になっててさー。
」
先生は郁と言うけれど
なぜかそれが心にひっかかった。
でも、ポツポツと雫のように
静かに話す先生の言葉は
私の心に優しく染みてゆく。
「私も、先生のこと
知りたいです」
すると
そんな言葉が私の口から
飛び出した。