君と私の物語 【短編集】

アツサ

「りーん！今日の晩ごはん何？」

「よくぞ聞いてくれました！」

「は？」

ちょっと引き気味な洸を残し

一人テンションが高い燐

「今日のごはんはなぁ...

　何とおでんや！」

「イ！ヤ！や！」

間髪入れずに洸は反論する

「そんな事ゆわれても

　もう材料買ってもぉたし！」

なんて燐は意地の悪い笑顔を浮かべている

「何でこんな暑いのにおでんやねん！

　そうゆうのは冬に食べるんじゃ！」

「だからこそ夏に食べるねん！」

などと訳のわからない

言い合いを始める二人

「今でも無駄に暑いのに

　何でまた熱いもん食べなぁあかんねん！」

「おでんが食べたかったんや！」

洸は元が猫舌で

熱い物を食べるのに気が進まないのだ

「嫌や！熱いの絶対嫌やー！」

終いにはダダをこねる始末

「んじゃぁ食べんでえぇわ！」

「それはムリ！」

意味が分からないという顔で

洸を見つめる燐

「熱いの嫌やねんやったら

　食べんでえぇがな」

「燐が作ったもんは絶対食べるんや！」

はぁ？という顔で洸を見つめ

洸は真剣な顔で燐を見る

先に折れたのは燐だった

「もぉえぇわ

　おでん作ってくる」

と言って立ち上がろうとすると

「もうちょい待って」

そう言って洸は

燐を後ろから抱きしめた

燐はそんな事まだ慣れていなくて

顔を真っ赤にしながらも

洸に気づかれぬように下を向く

「さ...さっき暑いやなんやらゆうてたがな...

　今は暑くないんか！」

なんて小さな照れ隠しは洸にはお見通しで

「んー？燐は嬉しいくせに」

「な...うるさい！」

その言葉を発するとともに

燐の肘鉄が洸の腹部へと入る

「うぐっ！」と変な声を出し

後ろへ２.３歩よろめく洸を置き去りに

燐は台所へと向かっていった

このアツサは夏のせい！

と心に思いながら



***アツサ***

（り...ん...

　お前ちょっと手加減とゆうモノを覚えろ...）

（洸が悪いんや！）


2011/08/06