【完】チーズ男とあたりめ女
・不謹慎にも笑った男
夕方の帰り道。
私は1人、トボトボと歩く。
蘭は結局、来なかった。
担任からは、「家庭の事情」とだけ聞かされた。
少し寄り道をして帰ろうと、コンビニに入る。
ただ、見て回るだけ。
新商品のお菓子。
30円引きのお弁当。
何一つ、興味がわかない。
でも、悠が“初めて来た”と言ったあの瞬間だけ思い出すと、口元の力が緩んだ。
驚いたし。
さすがお金持ちだとも思った。
ーープルルル…
やっと自分を取り戻せた時、電話が鳴った。
「もしもし?」
相手は蘭。
いつも通りに出た。
けど蘭は、あまり元気のない声で、私を自宅へと呼び出した。