【完】チーズ男とあたりめ女
「ありがとう…」



「気にしてんなよ」



悠は軽くデコピンをすると、ソムリエから渡されたワイングラスを持ち、注がれたワインの香りを嗅いだ。

動作を見つめてた私に、グラスを傾けた。

私はクンクンと嗅ぎ、「渋味はちゃんとありそうだけど、最初は甘そう」と呟いた。



「よくわかりましたね。こちらのワインは、舌で転がして頂くと、味が変わるんです」



ソムリエの人は、微笑みながら、頭を下げた。



「何だこの子!」



聖さんが私を怪しい人でも見るかのような目で見て来た。



「嗅覚が10倍なの!」



「私は犬か!」



指で“10”を作ってまで言った蘭に、思わず突っ込んだ。
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