【完】チーズ男とあたりめ女
「ごめん…何?」



『今から、みんなで行くから。
待っててね』



「うん…」



私は携帯を閉じると、携帯と父親からの手紙を握り締めて、家を出た。

何となく、小川を見に行きたくなった。

酒蔵では葬儀の準備が始まってる。

石段を下り、悠や蘭と過ごしたあの場所を目指して歩く。

道路から見下ろせば、まだ翔さんが川に落ちた時に滑った部分の形が残ってた。

草が生えず、土が凹(ボコッ)と窪んでる。

ここだけは、時間が止まってる気がした。

本当は私自身の時計を止めて欲しいのに。

みんなと笑ってた日々に。
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