幕末陰陽師


四つ足のケダモノ。




歯は鋭く、眼光は怪しい。
その体は月の無い闇夜よりもいっそう暗く、そして瘴気に包まれている。


彼らは常に空腹だ。
それは人の魂を食う事で一時緩和される。彼らは元は魂を持つ人間だったからだ。




…無様だ。




理性も感情も持たない、欲の固まりに成り果てた姿は醜く、実に愚かしい。




「キツネ、私を守りなさい。」




家の中から声が聞こえた。




「――分かりました、主様。」




感情が高ぶる。

このケダモノどもを殺す事に快楽を覚えているのは私も同様らしい。

私は刀を抜いた。




〈…オ前ハ野孤デハナイカ。下等ナ獣風情ガ何故我等ニ剣ヲ向ケル。〉




厄介な獲物だ。
今度の敵は少々強いようだ。
力の強い異形となると、知能と言葉を持つようになる。




〈野孤ノオ前ガ、人間ナドニ使エテイルノカ?
…ハッハッハ!!  ナント醜イコトヨ。〉

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