幕末陰陽師
私は何とも思わない。
私が何者であろうと、主様の命令に従えさえすればいいのだ。
私は刀を振りかざし、異形に飛び掛かった。
〈我ノ言葉ヲ無視スルノカ、
…マアイイ、オ前ノ四肢ヲ切リ裂キ、動カヌオ前の目前デ、ソノ旨ソウナ女ヲイタブリ食ッテヤル。〉
異形は言うと素早い動作で私の一太刀目を避けた。
振り向きざまに刀を持ち直し、再び斬り掛かる。
しかし、これも避けられた。
〈…遅イ。野孤ナド所詮コノ程度ノモノカ。〉
異形は二太刀目を避けてすかさずその鋭い爪を振りかざした。
左腕を擦った。鮮血は私の着物を赤く染めた。