幕末陰陽師
┣雑踏に潜む影
「──主様っ……!!」
京の南東
少し栄えた通りを、主様は歩いていた。
出店や茶屋が軒を連ね、人々が跋扈する。
「……キツネ?」
主様は少し驚いた様子でこちらを見た。
「お前、怪我はもういいの?」
「私の傷など、心配には及びません。
貴方をお守りせず、昼まで伏せっていた事が何よりも悔やまれます。
…それと、私は掟を破りました。私はまだそれについて罰を受けておりません。」
私は主様に逆らったのだ。
己の命よりも優先せねばならぬ、主様との掟を破ってしまったのだ。