幕末陰陽師
日が暮れるまで、主様は何やら道行く人間どもに聞き込みをしていた。






内容は覚えていない。
私には関係の無いことだからだ。










日が沈むにつれて、私の心が浮き足立つのを感じた。



『掟を破った罰に、お前は今夜の仕事を確実に遂行しなさい。』






その言葉が私を逸らせているのは明らかだった。






私は主様の命令を遂行せねばならぬ。






そこに怯えや緊張感などは、全く存在しなかった。






ただ、あるのは、命令を全うするという事実。
それと異形を倒すことに快楽を覚えた、己の獣の本能のみであった。






暮れた空の濁った色に、爪痕のような月がのぞいた。

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