幕末陰陽師
今夜の仕事は少し特別な仕事だ。
“ある組織”が絡んだ仕事であるため、組織の人物について聞き込みをしていた。
その組織については、私が京都守護職に関わりだしてから何度かは耳にしていた。
だが世間に頓着の無い私には、当然その組織にも興味を持つ事は無く、今日街で聞き込みをするまで彼らが世間では恐れられていたと言う事は知らなかった。
“新選組”
京の治安維持、警備を勤めていた彼らは、攘夷派志士の弾圧や暗殺の数々を手掛けたと聞く。攘夷派が新政府と化したあかつきには、旧幕軍として先だっての鳥羽の戦に敗れ、江戸に逃れたという。
彼らが京都を警備していた時代、私はまだ京には居なかった。
故に私は、彼らがどうして恐れられているのか、全く見当がつかなかった。
人を殺したから何だというのだ。
彼らにはそうするに値する大儀があったのだろう。
……私には、そんなものは無い。
無いにもかかわらず、私は異形を殺している。
人でないからよいのだろうか。
……人でなければ、よいのだろうか。