幕末陰陽師
「主様、彼は一体…?」
私は思わず主様に尋ねた。
本当にあの男が今回の“獲物”なのだろうか。






「彼は、身体を失った意識の塊。
いつも調伏している異形とは違って、彼は魂を欲しない。…ただの意識よ。」





私はそんなものは初めて目にしたというのに、主様は至極当然のような口振りで応えた。






意識の塊。






異形は言うなれば欲の塊だ。
欲と意識の違い、それは求めるか発するかの違いであろうか。
本能に従って生きている私には、意識など縁遠いものだ。






主様はその意識の塊をどうするつもりなのだろうか。






いつものように、私が刀で斬り付け、主様が札を使って調伏する。…それではいけないのだろうか。


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