幕末陰陽師
刹那、私は身動きが取れなくなった。






大きく太刀を振りかぶった状態のまま、私はそれ以上動けぬのだ。






男は私を黙って見つめた。





恐れを全く感じさせぬその双眸は、妙に不気味だった。





「…ぬ…し……さま…」

私は喋ることもままならぬ。






どうにか紡ぎだした声は主様に届いていたはずだった。






だが主様は動かなかった。
どこか苦々しい様子で、何かを躊躇しているようだ。




──…なに…か、おかしい……

必死で思考を巡らせたが、私にはなすすべもなかった。
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