幕末陰陽師
┣穢れた運命
◇─────────────◇
5年前
まるで血走った眼のように、赤い月が夜の黒を照らしていた。
丁度京を巻き込んだ激しい戦のほとぼりが、ようやく冷めてきた頃だった。
私が陰陽師の仕事の為にはじめて京に来たその日、森の入り口で死にかけている男を見つけた。
浅葱色の羽織を着たその男は、ただ死にたくないとばかりに刀を握りしめていた。
5年前
まるで血走った眼のように、赤い月が夜の黒を照らしていた。
丁度京を巻き込んだ激しい戦のほとぼりが、ようやく冷めてきた頃だった。
私が陰陽師の仕事の為にはじめて京に来たその日、森の入り口で死にかけている男を見つけた。
浅葱色の羽織を着たその男は、ただ死にたくないとばかりに刀を握りしめていた。