幕末陰陽師
…助かる筈が無い






誰が見ても分かる程血に塗れたその男は、かすれた声で呟いた。






「……ッ俺はまだ…死ねん…死ぬわけには……いかんのだ…俺は…まだ…ッ…」






「…どうして?」






気付くと私は男に尋ねていた。

消えゆく灯火がそれでも光を発する理由に、単純に興味を持ったのだろうか。







いや違う。その理由を私は知らなければならない。






見えない何かが、彼の最期を看取ってやらねばならないと私に告げているような、そんな気がしてならないのだ。

< 56 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop