桜色の底



「先生、吉田先生」



先生は誰にでも同じようなトーンで返事をする。



「ん?よんだ?」


「楽譜が一枚足りないです」


「え、嘘、何番?」


「トランペットの3番」


「オッケー、すぐ印刷するね」



先生のその指先が、私だけに向いてほしかった。







「先生 彼女 いますか?」


「いません」





あながち、嘘でもなさそうだった。




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