【短編】双子の憂鬱
チッ。
何なんだよ…
心の中で舌打ちをする。
何で俺がこんな…
苛立ちが声色に滲む。
「そうなんだろ?アンタから見たら、俺が彗だろうが蓮だろうが同じ…」
「違います」
俺の言葉を、凛とした声が遮る。
驚いて相手を見下ろすと、女の子はもう一度「違います」と繰り返した。
「何言って…」
「どちらも同じなんかじゃありません。彗さんは彗さんで、蓮さんは蓮さんなんです。二人とも違う、一人の人間です」
ハッとして目を見開く俺に、女の子はふわりと優しく微笑んだ。
「好きなんです、とっても。初めて会ったあの日から」
ハッキリとした声で話す女の子に、俺は見惚れた。
……なぁ、蓮。
お前、いい子に好かれたな。