【短編】双子の憂鬱
「ほんとに俺が好きなの?」
この女の子に、惚れてる。
「俺が?俺だけが?蓮じゃなくて?」
俺の質問に女の子はゆっくりと顔を上げて、ふわりと微笑んだ。
瞳に透明な雫をのせたまま。
「――――はい…彗さんが好きです」
その言葉を聞くと、俺は女の子を抱きしめた。
力いっぱい腕の中にいる存在を抱きしめる。
「す、すぃさ…」
「ありがとう…」
女の子の肩に頭を乗せてつぶやくと、女の子はビクリと肩を震わせた。
「“俺”を好きになってくれて」
笹本彗という俺を認めてくれて。
女の子は恐る恐る俺の頭を抱きしめて、ゆっくりと頷いた。
「はい…」
俺の瞳にも、透明な雫が浮かび上がった。