【短編】双子の憂鬱
彗のヤツ…
預けきったように可愛いらしく笑っている女の子に、優しく微笑んでいる彗。
あーあ。
可愛いヤツ。
「あの子は彼女、なの…?」
彼女?
フッと小さく笑う。
「いや。違うと思うよ」
俺がそう言うと、女たちの目が輝いた。
「じゃ、じゃあ…っ!」
「でも」
残念だけど。
お前たちには分からないだろうな。
「きっと大切な人だ。何よりも、な」
お前らみたいなヤツらとは違って。
「えっ、えっ?蓮くん?」
驚いている女たちを置いて、俺は歩く足を速めた。
握りしめた手紙に目を落とし、小さく笑う。
「…言ったろ?“手ごわい”って」
小さくつぶやいた俺の声は誰の耳に入ることもなく、風に吹かれて、消えた。