【短編】双子の憂鬱




彗のヤツ…


預けきったように可愛いらしく笑っている女の子に、優しく微笑んでいる彗。


あーあ。


可愛いヤツ。




「あの子は彼女、なの…?」




彼女?


フッと小さく笑う。




「いや。違うと思うよ」




俺がそう言うと、女たちの目が輝いた。




「じゃ、じゃあ…っ!」


「でも」




残念だけど。


お前たちには分からないだろうな。




「きっと大切な人だ。何よりも、な」




お前らみたいなヤツらとは違って。




「えっ、えっ?蓮くん?」




驚いている女たちを置いて、俺は歩く足を速めた。


握りしめた手紙に目を落とし、小さく笑う。




「…言ったろ?“手ごわい”って」




小さくつぶやいた俺の声は誰の耳に入ることもなく、風に吹かれて、消えた。
< 21 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop