【短編】双子の憂鬱
物好きなヤツもいるもんだ。
全校生徒に恥を晒したい、なんてな。
「分かったよ。いつも通りにやればいいんだろ」
軽く笑いながら蓮に背を向ける。
すると、いつもより少し低い声で蓮に呼び止められた。
足を止め、首だけで振り返る。
「何だよ、蓮」
「ひとつ、可愛い弟に忠告しとこうと思ってな」
「忠告?」
可愛い弟という失礼極まりない発言は置き、俺は聞き返した。
何だよ、忠告って。
「今回の相手はなかなか手ごわい。心しとくんだな」
そう言いたいことだけ言って、蓮は俺に背を向けた。
その背中が教室のドアに吸い込まれるまで、俺はぼーっと突っ立っていた。
「…意味、わかんね」
ぼそりとつぶやき、俺も自分の教室のドアをくぐった。
どんな相手が来るのだろう。
久しぶりに放課後が待ち遠しく感じた。