【短編】双子の憂鬱
「……好きです」
震えた声で、でもハッキリと告げられた言葉に、ドクン…と心臓が高鳴った。
女の子の真摯な想いが伝わってきて、初めて“嬉しい”と思った。
だけど。
「ずっと前から笹本さんのこと…」
きっと、この子は分かってない。
「ずっとずっと、好きだったんです」
俺が、“笹本蓮”になりすました“笹本彗”であることを。
この子は、蓮に告白しようとしたんだ。
その事実が、俺を追い詰める。
「……ねぇ。それって俺なの?」
その質問に、相手の女の子はキョトンとしたようだった。
それが妙に苛立たせる。
「どっちでも良かったんでしょ。蓮でも彗でも」
淡々と冷たく突き放す。
苦しめてやろうと。
なのに、苦しくなっていくのは俺の方だった。