妖怪の住む町
「あの人はおとうさんにとってどんな人?」

「ん?あの人はね……」

ゆっくりと思い出す。

長く黒髪。

吸い込まれそうな青く大きな瞳。

華のような笑顔。



――――――

「お父さんの初恋の人だよ。」

「はつこい?」

そう、一目惚れだった。

好きになるのに時間なんてなかったんだ。

ただ、僕が人間で君が雪女。

それだけは変えがたい事実だった。

「初めて好きになった人だよ。」

叶わない恋だった。

だけど僕はまた会いに行くよ。

これから先どんな事があろうとも。

お祖父さんになっていても。

君がこの町にいなくなってても。

僕は何度でも君に会いに行くよ。

妖怪の住む町へ―――――

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