それでも世界はまわる
舞台袖で待機している間、珍しくりおんがこちらに近付いてきた。

何事か耳元で囁くと、美佳ははっと息を呑む。
見開いた目のまま確認すると、彼はそっと微笑んで列に戻っていった。

一年生放送委員の桜庭愛が原稿を読みながら、三年生はステージに登場する。

指揮は千尋、ピアノは汐里が担当だ。

聞き飽きるくらい練習したとはいえ、やはり緊張する。

全員が定位置につき、深く一礼すると、体育館が静まり返った。
心臓の音がお客さんまで聞こえるのではなかろうか。

千尋が指揮棒を掲げた。
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