それでも世界はまわる
汐里の指が鍵盤を滑り、踊り出す。伴奏。優しく、軽やかな旋律。

続く歌詞を胸の中で呟くと、先ほどのりおんの言葉が蘇って動揺する。
必死に最初を歌い出したが

――たとえば君が傷ついて くじけそうになった時は

 涙が頬を伝う。

――かならず僕がそばにいて ささえてあげるよ その肩を

 この歌詞、僕の気持ちそのまま。美佳さんに送るつもりで歌うよ。

――世界中の希望のせて この地球はまわってる

 汐里のピアノ演奏はしとやかに、しかし躍動的に舞う。

声が詰まってしまったが、咳払いをしてごまかした。
三年生はクラス十七人中男子が五人しかいないので、必然的に目立ってしまう。ばれないために歌うのをやめた。



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