それでも世界はまわる
「はいっ、今日は昔の恋愛はなんぞや、ということを勉強します。じゃあ百十三ページを開いて下さい」

なんぞや、とは石井先生の口癖である。水瀬村より東側に位置する地方の方言だ。

「では、一回声に出して読んで下さい」

「いとしい人。南野洋子。
 来る日も来る日もいとしい人を見ていた。ある日は松のこかげから。またある日は、けまりをしているお姿を、ずっと見つめていた。けれどあなたはとおい人」

舞台にいる潤を除いた全員で、千尋たちクラス委員の作った詩を音読する。

作者は平安時代に生きた人という設定で作った――名前そのままだが――、これも笑いを狙った詩である。
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