それでも世界はまわる
「ちょっと大道具! 後ろの掲示板なんとかしてくれ! あんな注文してないぞ!」

三人が背景にある掲示板を振り返ると、そこには「今月の歌・グリーングリーン」と書かれた紙が貼ってあった。丁寧に歌詞もきちんと三番まである。
それだけではない。肝心の掲示板という文字も「刑事板」となっている。
英二が思わず吹き出した。

旧校舎の入り口から、肉付きのいい男がこちらに来た。
無駄な贅肉とはまさにこれのこと。大道具を運ぶのにも必要ないつやつやした脂肪だ。

「あ、すいません。それ、別の現場のもんですね。すぐ取り替えます」

「早くしてくれ! 今日の分の撮影が終わらないじゃないか!」

ぶるぶる揺れる腹の肉を見ながら、監督は髪の毛を掻き毟った。


   *      *      *


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