それでも世界はまわる
千尋が指揮棒を掲げた。

汐里の指が鍵盤を滑り、踊り出す。伴奏。優しく、軽やかな旋律。
続く歌詞を胸の中で呟くと、先ほどのりおんの言葉が蘇って動揺する。必死に最初を歌い出したが

――たとえば君が傷ついて くじけそうになった時は

 涙が頬を伝う。

――かならず僕が

「カーット!」

合唱に負けない野太い声は体育館に響き、一気に静かになる。

どっしりした監督にしては珍しく、言いづらそうに控えめに前へ来た。
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