それでも世界はまわる
「美佳さん・・・。僕・・・ごめん」

「ちがっ・・・違うの・・・」

慎吾の誤解を解こうとなんとか言葉をひねり出した。
心の中で渦を巻くたくさんの思いからやっと声になったそれは、頼りなく掠れていたが、ちゃんと慎吾に届いていたようだ。

慎吾は美佳の手をそっと握った。

恥ずかしいのか震えながら遠慮がちに、でもしっかりと握る。温かい。

何か言いたい。
何か言って、早く安心させてあげたい。
そんな思いが美佳の頭の中を駆け巡る。
けれども慎吾の優しさが手を通して体中に伝わってくる。何も言えない。
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