天地創造
「最近女神さまはふさぎこまれておるのぉ」
最初に生まれた光の精霊が心配そうに空を見上げた。
「『海の』から生まれ、多様に進化する生命たちに不安を持たれておられるそうだ」
答えたのは光と対をなす闇の精霊。
精霊たちは年に2度、冬至と夏至に集まる。
光と闇が前もって神々の側に上がり、神々の意思を地上にもたらす。
それを他の精霊たちに伝える大事な集まりだ。
今は夏至だった。
海の精霊が反論した。
「生命の誕生と進化は神のご意志。私が生命を献上したわけではありませぬ」
精霊たちに明確な序列はなかったが、神々の側に上がる光と闇は特別だ。
長老の役割を担う。
「そうじゃな、『海の』。我らが神のなさりように口を出すわけにはいかん」
闇がため息混じりに言葉をつむいだ。
一体何度このやりとりを交わしたかわからない。
光はそんなやり取りを聞きつつ、もう一度空を見上げた。
彼らは一様に何かを感じ取っている。
「なぜか妙な予感がしますね」
そう言ったのは風の精霊。
「君が不安気に僕を揺らすから僕まで変な気分だよ」
風に文句を言ったのは森の精霊だ。
「騒ぐでない。全ては神々の思し召し遊ばされるとおりなのだから」
大地の精霊がたしなめる。

精霊たちの予感は100万年後に的中する。
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