天地創造
100万年という時間は神々や精霊たちにとって長くはない。
彼らにしてみればあっという間だ。
だが短いサイクルで寿命を迎え、命を繋いでいく生命には十分過ぎる進化の時間。
また夏至がやってきた。
「ここ数万年で生まれた生き物、すごいですね」
風の精霊が落ち着かなさそうに草の精霊の上を飛び回る。
「もおっ!『風の』ったら少しは落ち着いてよっ」
花の精霊も草の精霊に同意して文句を言う。
「そうよ、貴方のせいで花がすぐに散っちゃう。受粉がうまくいかなかったらどうしてくれるの?」
「ごめん。でもさ…」
「『風の』が騒ぐのも無理はない」
光の精霊が若い彼らを見渡す。
「新しい生命には我らの仲間が生まれた」
そう言った光の精霊の視線の先には最年少の精霊たちがいる。
虫や魚、あらゆる動物たちの精霊だ。
残念ながら、長い時間の中で絶滅した生き物もいる。
その精霊たちも消滅してしまい、この世界のどこにもいない。
「じゃが…」
光の精霊は悲しみの中に憂いを含んだ表情を見せた。
「人間にだけは精霊が生まれなんだ」
進化の過程で最後に生まれた生き物、人間。
地上のあらゆる生命に精霊が宿る。
が、人間だけは例外だった。
「精霊を宿さないのは二柱の神のみ。そも神には精霊が宿る必要などないからの」
闇の精霊は光の精霊の憂いに気づいている。
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