天地創造
「人間は」
闇の精霊が光の精霊を見ながら言った。
「神のご意志から外れた生き物じゃ」
最年少の精霊たちが一斉に騒ぎ始める。
「そんな…」
花の精霊が絶句した。
「何か根拠があるのか、『闇』よ」
光の精霊があまりの発言に目を丸くして先を促す。
「残念じゃが彼らの心の中にはわしがおる」
誰もその言葉を理解できなかった。
「ど、どういう意味じゃ」
「『光の』お主は薄々わかっておろう。全ての生き物は心に光がある。いや、むしろ光しかない」
さっきまでの騒ぎが嘘のように皆静まり返り、闇の精霊の言葉を待つ。
「じゃが人間だけは違う。わしもこんなことは初めてじゃ。光もあるが人間は欲望という名の闇がある」
「欲望という名の…」
「闇…?」
誰ともなくぼんやりと闇の精霊の言葉を繰り返した。
「で、でも他の生き物にだってありますよね、欲望は!」
何か恐ろしい予感がして、でもそれを否定したい虫の精霊が口を挟んだ。
「お主たち動物になら少しは理解できるかもしれぬ。支配欲や権力への欲が」
「縄張り争いってことですか」
「そうじゃ、わしが宿るほどに強い…な」
闇の精霊は表情を強ばらせてさらに解説する。
「わしは人間が生まれるまで夜の闇しか司どっておらなんだ。しかしこれからは心も…司どらねばならぬ」
「『闇の』…」
光の精霊が痛々しく表情を歪める。
「これからわしがどうなるかはわからぬ。まさしく神のみぞ知る領域じゃ」
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