聞いて欲しいのです。
話を聞こうか


寂びれた喫茶店の一席。
珈琲を頼み、少し待っていると
携帯がメールの着信を告げた。


『今、着きました』

メールを読んだと同時に、出入口のベルが鳴る。


店内に入ってきた人物は、
僕を見つけると、他に客は居ないせいだろう、迷わず向かいに座った。



「お待たせしてしまって、申し訳ありません」

「いえ、僕もさっき来たばかりですから」


そのやり取りをした後、
店内に聞こえるのは静かなBGMだけ。

僕も、相手も口数の少ないタイプらしい。
見知らぬ相手と交わす雑談の種が無い。

会話の無いまま、相手も珈琲を頼み、出てくると再び口を開いた。


「それでは私の話、聞いていただけますか?」


どこか切羽詰まったような、
しかし安心したような表情で、相手は切り出す。


僕は黙って頷き、目当ての話を待った。

そうしてようやく、話が始められる。



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