I MISS YOU…[短編]
***
「はあ…」
最悪だ。
大きなため息を一つついて、俺は引っ張って来たホウキを持ち直した。
新学期早々、ジャンケンに負けて1ヵ月間一人で体育倉庫の掃除をする事になったのだ。
まあ…別にそれだけならまだマシなんだけど。
俺が、こんなにも嫌なのは…
この倉庫が廃虚になっているから。
そういうワケで、近くには何もない。
しいて言えば桜の木といった所だろう。
「ほんと最悪…」
俺はため息をつきながら倉庫へと向かった。
「…うっわ、マジ…?」
たどりついた先は、俺の想像をはるかに越える物だった。
サビついて回らない鍵。
古びて開かない窓。
「…コレ、だ…よな?」
倉庫の前に咲いている桜は、不釣り合いと言えるほどキレイに咲き誇っている。