見えないモノと、指の銃。

少しすると、画面の中の女の人は、
見開いていた目を閉じた。

カメラが下にずれたのか、彼女の顎が映る。
そこには誰かの手が一緒に映っていて、
どうしても嫌な想像をしてしまう。

これは彼女が殺されたという、そういう映像なんだろう。

作り物である事を願いながら、またマウスを握るけど、やっぱり自由にはならない。


場面が切り替わり、
今度は誰も居ない、暗闇が映し出された。

変わらずに、ねっとりとした、よく聞き取れない声も聞こえている。


突然、画面はブレ、
少し明るい映像になった。
どうやらここは、夜道らしい。

するとそこに、髪の長い人物の、後姿が現れる。

その人物が振り返った。

恐怖の色を浮かべた表情の彼女は、
さっきの、事切れた女性と同一人物だ。

時々振り返る彼女を、
カメラを持った誰かは、追いかけているらしい。

どちらの歩みもゆっくりとしたものだ。

しかしその距離は少しずつ広がり、
最後は、女性は振り返る事も無く、
離れた闇の中へと消えて行った。


……逃げ切れた、という事なんだろうか。

最後まで見届ける事が、助けるという事?

よく解らない。

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