見えないモノと、指の銃。
「‘かげぐち君’って、知ってますか?」
ようやく腕は解放され、ベンチに座ると、三枝がそう聞いてきた。
俺はそんな単語に聞き覚えは無い。
「あ、俺知ってる。妹が言ってた。
何か小学生の間で流行ってる噂……ですよね?」
加々美さんのその言葉に三枝は頷いた。
「そうです。
かげぐち君って呼ばれてる存在が、
この公園に居て、その名前の通り、人の陰口をたたくそうです」
そのかげぐち君が怖くて、子どもはこの公園に遊びに来るのを避けているらしい。
「だから今日は、
かげぐち君を探してほしいんです」
「だ、そうです。お願いします」
三枝の言葉に続けるように、加々美さんに言う。
「まかせてください!頑張ります!」
やる気に満ちた彼を横目に、
「まあ、先輩のおとりで十分だと思うんですけどね」なんていう三枝の声は聞かなかった事にしたい。
そんな訳で、かげぐち君探しが始まった。