見えないモノと、指の銃。


「あ、そうだ。名前で読んで!」

遊具の影を覗いてみたりしていると、
突然、思い出したように加々美さんが言った。
ですます調だったりタメだったり、口調もコロコロ変わっている。さらによく解らない。


「お断りします」

早く心残りとやらを消して、あわよくば俺の事は忘れてほしい。
何か苦手だ、この人。


……というか、まず三枝にその心残りを撃ってもらえばよかったんじゃないか?


断った後、三枝の傍へ近づき、その事を耳打ちしてみる。


「無駄ですよ。
強い物だと、消してもまた甦りますから。
先輩だってそうでしょう?」

そんなフリをされても、
毎日撃たれるソレの詳細を、俺は知らない。
だから曖昧な返事を返すしかない。


「害は無いと思いますから、
諦めて我慢しててください。
ちょっと他に、あるかもしれませんし」

何がだ?


次に何かを手伝う時にも、
加々美さんが必要になったりするとか言うのか?


……あんまり考えないようにしておこう。
あとで起こる事の心配を、今からしてても仕方ない。

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