見えないモノと、指の銃。


時々は、いい思い出だって見せてくれてもいいじゃないか。

自由に巻き戻せない夢に、次第にイラつきが増してくる。

……この夢は、かげぐち君の所為だろうか。
嫌な事ばかり思い出させてくれやがって。



夢の中で、常に俺は俺で。
選択肢によっては結果を変えられるかもしれないのに、ただ繰り返すだけ。

目の前で素早く動く時間。

早く目が覚めないだろうか。


……目蓋の下ろせない視界の中で、俺は誰かを見つけた。

色んな景色の中で、
いつもどこかにいるようだ。

こんな人、知り合いにいただろうか?
記憶なのか、俺の脳が作り出した幻想か。


その人の顔は見えない。

だけど口が勝手に動く。


『母さん』と。


「母さん!!」


突然響いた声に、ビクリと飛び起きた。

現実でも口に出ていたのかと一瞬驚いたけど、今のは俺の声じゃない。


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